あれや主義に生く八十八の咢堂先生(但し先生の言ふ所に一々賛成なるにはあらず)
五年をひそみゐたりし人たちの頭もたげて名の聞えくる
[#地から1字上げ]九月六日
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雑詠
[#ここで字下げ終わり]
蚊帳つるも力乏しくものうくて蚊にさされつつ寝ねがてにしてをり
つぎつぎに歯は落ちくれど医者にさへ通ふ力もなくなりてをり
よくもまた痩せけるものか骨と皮九貫にも足らぬ身となりにけり[#地から1字上げ]九月六日
願はくは死ぬる夕を庵にて花にかこまれ香たきてあらむ
願はくは花にかこまれ小さなる庵に臥して世と分かれなむ
小さなるいほりに住みて大きなる饅頭ほほばり花見てあらな[#地から1字上げ]九月七日
われ死なば花を供へよ大きなる饅頭盆に盛りて供えよ
階段は山を攀づがに苦しかり今ひとへやの階下に欲しき
何よりも今食べたしと思ふもの饅頭いが餅アンパンお萩
死ぬる日と饅頭らくに買へる日と二ついづれか先きに来るらむ
雨ふれば雨もり月照れば月もる此のあばらやも壕にはまさるか
急変を好めるさがのわがためにうれしきかぎり世は急変す[#地から1字上げ]九月八日
さほどまで肉もさかなも思はねど饅
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