はままよとあきらめにけり[#地から1字上げ]九月四日
近からば君がりゆきて茄子トマト腹に満つまで食べなむものを
近からばかた手にあまる大きなるトマト携へ訪ひ来んものを(以上二首小林輝次君の葉書を見て)
今やまたひなた恋ほしくなりにけりひなたに出でて蟻を見てをり
今日はまた力め[#「め」に「〔ぬ〕」の注記]けぬる如くにて為すこともなく枕してをり
余りにもからだだるくて腹が立ち思はず荒き声立てにけり[#地から1字上げ]九月七日
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平和来たる(その二)
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何も彼もやがては遂に焼けなむと諦めゐたる物みな残る
爆弾にもろ手失ひわかものの生き残れるは見るもかなしき
怪我もせず物も焼かれず生きのびて今日の日に遇ふ夢のごとくなり
満洲は支那にかへれりやがてまた大連立ちて吾子も帰らむ[#地から1字上げ]九月四日
思ひきや戦やめるけふの日に生きえて我の尚ほ在らむとは
思ひきやげに思ひきや一兵も残さぬ国にわれ生きむとは
忽ちに風に木の葉の散る如く軍部の猛者のしぼみゆくかな[#地から1字上げ]九月五日
何事も一朝にして顛倒し鬼は仏に非は善となる
生き給ふ甲斐こそ
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