二三里を距てたる山本村の清水に疎開し来れと誘はるるにより、かかる夢あり)
[#地から1字上げ]以上五月十三日
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痩せ衰へつつも尚ほ生き続くらしければ
[#ここで字下げ終わり]
我ながら驚くばかり痩せし身もなほ生きてあり生くる道あり
かくばかり衰へて尚ほいのちあり不思議なるかないのちてふもの[#地から1字上げ]五月十四日
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数十日目に頭髪を刈り、帰りてよめる
[#ここで字下げ終わり]
理髪屋にゆきてかへりていねをれば夕方まけて熱高まりぬ
脈多く熱高けれど負けもせずねどこ這ひでていひをはみけり
若くしていためし胃腸何事ぞ六十路をすぎていよよすこやか
藪蚊いで顔さすころを今も尚ほゆたんぽ入れてわれいねてをり[#地から1字上げ]以上五月十四日
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生来蟄居を好み旅を楽まむとする心の甚だ乏しかりし余も、六十七歳となれる今年、一月より病臥すること半ヶ年になんなんとするに及び、もはや此の世に分かるるも遠からじと思ふに至れるものか、旅に出でむとする心次第に萌して、漸く抑えがたきを覚ゆ
[#ここで字下げ終わり]
いづこにて死なむもよし
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