れたアダムス氏の『社会革命の理*』を見ると、近々のうちに社会には大革命が起こって、一九三〇年、すなわちことしから数えて十四年目の一九三〇年を待たずして、現時の社会組織は根本的に顛覆《てんぷく》してしまうということが述べてあるが、今日の日本にいてかかる言《げん》を聞く時は、われわれはいかにも不祥不吉《ふしょうふきつ》な言いぶんのように思う。しかし翻って欧米の社会を見ると、冷静なる学究の口からかかる過激な議論が出るのも、必ずしも無理ではないと思わるる事情がある。英米独仏その他の諸邦、国は著しく富めるも、民ははなはだしく貧し。げに驚くべきはこれら文明国における多数人の貧乏である。
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* Brooks Adams, Theory of Social Revolutions, 1913.
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私は今乾燥無味の統計を列挙して多数貧民の存在を証明するの前、いうところの貧民とはなんぞやとの問題につき、一応だいたいの説明をする必要がある。
昔釈雲解という人あり、「予他邦に遊学すること年有りて、今文政十二|己丑《きちゅう》の秋|郷《きょう
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