によれば、これらの児童は食事の給与を受くるに及び、にわかにその顔色が輝いて来て、その態度は快活になり、学業もこれに応じて進歩を示したということである。しかしこれらの事実はこれを数字に示すことあたわざれども、何人も争うことあたわざるは、彼らの体重が著しく増加したという点で、これを図に示さば次のごとくである。
 左の図表中、黒の曲線は、受験児童四十名の体重増加率を示せるものにて、体重の単位は図に記入しおけるがごとくポンドである。また図表中、点線をもって表わせるは、食事の給与を受けざる児童六十九名の体重増加の平均率である。その直線となりおるは、各週別の変動を示さず、全期間の平均率を表わせるがためである。これだけの注意さえ加えおかば、この図表の意義は一見明瞭なりと信ずるがゆえに、その子細はこれを省略しおくべきが、要するに右実験の結果、多数貧民の児童は、食物さえ改良してやるならば、たといその他の生活状態は元のままに放任しおくも、肉体及び精神の発育上充分の効果をあげうるものなることが、明瞭に立証されたのである。
[#食事の給与と体重増加率の相関図(fig18353_06.png)入る]
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