vいこれを思う時、筆を停《とど》めて落涙するを禁じ得ざる者である。[#地から1字上げ](大正六年一月九日)

       二の二

 私は繰り返す。――現代世界の政治家中ロイド・ジョージは私の最も好きな政治家である、けだし彼は弱者の味方である。ことに彼は不幸なる弱者が無慈悲なる強者のために非道の圧制に苦しむを見る時は、憤然としておのれが面《おもて》に唾《つばき》せられたるがごとくに嚇怒する。しかしてこの強者をおさえかの弱者をたすくるがためには、彼はほとんどおのれが身命の危うきを顧みざる人である。
 思うに最もよく彼の人物を見るに足るものは、南ア戦争当時における彼の態度である。
 苦学の結果幸いにして弁護士となり得たる彼は、のち選ばれて代議士となる。代議士となりてより数年後、彼の一生にとりて一大事件と見なすべきものは、南ア戦争の爆発である。
 南ア戦争とは、英国がアフリカの南端トランスヴァールの金鉱を獲得せんがために、ブーア人を相手に起こした戦争である。ロイド・ジョージ思えらく、こは資本家の貪欲《どんよく》を満たさんがために起こされたる無名の師である。世界最大の強国たる英国が、「ウェー
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