「、と申すよりほかにしかたがない。しかも万一前後の所論につきこの物語の著者と多少感を同じゅうせらるる読者があるならば、それらの読者を相手に私は今少し述べたいことがある。
私は先に消費者としてまた生産者としての各個人の責任を述べ、ひいて経済と道徳との一致を説いたが、これにつけて思い出さるるは、中庸の「道は須臾《しゅゆ》も離る可《べ》からず、離る可きは道に非《あら》ざる也《なり》」の一句である。思うに世の実業界に活動するもの往々道徳をもって別世界の事となし、まれにこれを口にするも、わずかに功利の見地より信用の重んずべきを説くの類に過ぎずといえども、もし余の説くところにして幸いに大過なからんか、朝《あした》より夕《ゆうべ》に至るまで、※[#「尸+阿」、156−11]屎《あし》送尿《そうにょう》著衣《ちゃくい》喫飯《きっぱん》、生産消費いっさいの経済的活動を通じて、すべてこれ道ならざるはなく、経済の中に道徳あり、経済すなわち道徳にして、はたして道は須臾も離るべからず、離るべきは道にあらざることを知るに足る。余大学の業をおえ、もっぱら経済の学に志してより今に至って十有四年、ようやく近ごろ酔眼|
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