オとあるは、これを言い換うれば、経済を改善しなければ道徳は進まぬということなので、そうしてこれがいわゆる経済的社会観の根本精神の一適用なのである。[#地から1字上げ](十二月十日)

       十一の三

 私は上編において今日多数の人々が貧乏線以下に沈淪《ちんりん》していることを述べたが、これらの人々は孟子《もうし》のいわゆる恒産なきのはなはだしきものである。しかるに民のごときは恒産なくんば因って恒心なく、すでに恒心なくんば放辟《ほうへき》邪侈《じゃし》なさざるところなし。いずくんぞ彼らをしておのおのその明徳を明らかにし、相親しみて至善に止《とど》まらしむることを得ん。これ経済問題が最も末の問題にしてしかも最初の問題たるゆえんである。
 試みにこれを現代経済組織の人心に及ぼす影響について述べんに、すでに説きしがごとく、金さえあれば便利しごくな代わりに、金がなければ不便この上なしというが、今の世のしくみである。すでに世のしくみがそうである。そこで世間無知の輩《ともがら》は、早くもいっさい万事これ金なりと心得、義理も人情も打ち捨てて互いに金をつかみ合うさま、飢えたる獣の腐肉を争うがご
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