l心に及ぼす影響の甚大《じんだい》なるものなることを認めつつある者の一人で、その点においては私は十九世紀の最大思想家の一人たるカール・マルクスに負うところが少なくない。
今私はここにマルクスの伝記をくわしくお話しする余裕ももたなければ、またその必要も感じない。しかしいつ読んでもおもしろいのは豪傑の伝記である。すなわちもし諸君が許さるるならば、私はマルクス伝の一|鱗《りん》を示すがために、ここにマルクスの細君の手紙の一節を抄訳しようと思う。
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「……嬰児《みずご》のために乳母《うば》を雇うというがごときはもちろんできがたきことにて候《そうろう》ゆえ、わたしは胸や背《せな》の絶えず恐るべき痛みを感ずるにかかわらず、自身の乳にて子供を育てることに決心いたし候。しかるに哀れむべき小さなる天使は、不良の乳を飲み過ぎ候いしために、生まれ落ちたる日より病気にかかり、夜も昼も苦しみおり候。彼はかつて一夜たりとも二三時間以上眠りたることこれなく候。……かかるところへ、ある日のこと、突然家主参り……屋賃の滞り五ポンドを請求いたし候いしも、われらはもとよりこれを支払うの力これなく候い
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