uいわゆる全体の者の福祉を図ることが各個人の第一の義務であり、また各個人の福祉を図ることが全体の者の唯一の義務である」という主義をば、確《かた》く信じて疑わず、身を処すること一にこの主義のごとくなるを得《う》る人々にとっては,かくのごとき主義をもって計画された社会制度が最上の組織でありうるけれども、利己主義者を組織するに利他主義の社会組織をもってするは、石を包むに薄帛《うすぎぬ》をもってするがごときもので、遠からずして組織そのものが破れて来る。されば戦後の欧州がはたして戦時の組織をそのままに維持しうるや否やは、もちろん一の疑問たるを免れぬ。
しかしながら、人間はよく境遇を造ると同時に、境遇がまた人間を造る。英独仏等交戦諸国の国民は、国運を賭《と》するの境遇に出会いしがゆえに、たちまち平生の心理を改め、よく献身犠牲の精神を発揮するを得た。それゆえ、平生ならば議会も輿論《よろん》も大反対をなすべき経済組織の大変革が、今日はわけもなく着々と実現されて来た。これは境遇によって一変した人間が、さらにその境遇を一変せしめたのである。しかるに境遇はまた人間を支配するがゆえに、もしこの上戦争が長びき
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