。そうして体量を秤《はか》って行くとだんだんに減ずるのである。そこで次には食物の分量をずっと[#「ずっと」に傍点]ふやしてみる。そうすると体重はふえだす。何か注文があるかと聞くと、今度はもう少しうまい[#「うまい」に傍点]物を食べさせてほしいというようにぜいたくを言いだす。食物に対する欲求が分量から品質に変わって来る。英国のダンロップ博士がスコットランドの囚徒について試験したのはこの方法によったものであるが、この時の成績(一九〇〇年パリーに開催されたる第十三回万国医学大会において報告)によると、二個月間毎日三千五百カロリーの熱量を有する食物を与えておいた時には、普通の体重を有する囚徒のうち約八割二分の者は次第にその体重を減じて来たが、三千七百カロリーの熱量を有する食物を与えてみると、約七割六分の者は次第にその体重を増加するかまたは維持することができたという。すなわちこの時の試験によると、三千五百カロリーの熱量を有するだけの食物では少し不足だという事になるのだけれども、しかし試験に供せられた囚徒は日々石切りを仕事としている者で、相当激しい労働に従事していたわけなので、現にダンロップ博士自
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