ソその要求者の提供しうる金額の多少)をもってのみその標準となさんとするは、分配の制度にして理想的となりおらざる限り、決して理想的に社会の生産力を利用するゆえんの道ではない。
以上述べたるところは、個人主義の理論上の欠点である。もしそれ、現代経済組織の下における利己心の束縛なき活動が、事実の上において悲しむべき不健全なる状態を醸成し、かくて一方には大厦《たいか》高楼《こうろう》にあって黄金の杯に葡萄《ぶどう》の美酒を盛る者あるに、他方には襤褸《らんる》をまとうて門前に食を乞《こ》う者あるがごとき、いやしくも皮下多少の血ある底《てい》の者が※[#「挈」の「手」に代えて「心」」、107−14]乎《かいこ》として見て過ぐるあたわざる幾多悲惨の現象をいかにわれらの眼前に展開しつつあるやの実状に至っては、余すでにこの物語の上編においてその一斑を述ぶ。請う読者自ら前後を較量して、今の世に経済組織改造の論のようやく勢いを得んとすることの決していわれなきにあらざるを察知されん事を。[#地から1字上げ](十二月一日)
十の一
現代経済組織の下において個人主義のもたらせし最大弊害は、多
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