アれよりよろこぶべき事はないと考えたのである。しかして世間の事業家は、別に国家から命令し干渉することなくとも、ただ自己の利益を追求するがために、互いに競争してなるべく値段の高く売れる貨物を作り出すに決まっているから、もしわれわれが社会の経済的繁栄を計らんとするならば、すべてこれを私人の利己心の最も自由なる活動に一任しておくに限ると考えたのである。
 しかし、すでに中編にて説明したるがごとく、最も高く売れる物が生産されて行くという事は、ただ社会の需要が最もよく満足されて行くという事に過ぎない。しかるにいわゆる需要とは、購買力を伴うた要求ということである。ただ金持ちの要求というだけのものである。しからば単に需要によりてのみ一国の生産力を支配し行くことの不合理なるは言うまでもない。第一に、要求のあるに任せてこれを満たすということは、必ずしも社会公共の利益を計るゆえんではない。おおぜいの者の要求のなかには、これを満たすことが本人のためになんらの益なきのみならず、他人のためにも害を及ぼすものが少なくない。次に、各種の要求のうち、そのいずれを先にすべきやを定むるに当たっても、単に需要の強弱(すなわ
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