その生活を維持し行くを得《う》るは、そもそも何によるかと考えみよ。ひっきょうは皆利己心のたまものではないか。いかに偉い経営者が出て、あらかじめ計画を立てたとて、数百万の人々の種々雑多の欲望をば、かくのごとく規則正しく満たして行くということは、到底企て及ぶべからざる事である。」(ランゲ氏『唯物主義史論』中の一節を借る*)。個人主義者はかくのごとく観ずることによりて現代の経済組織を謳歌《おうか》するのであるが、げに今の世の中は、金ある者にとりてはまことに重宝しごくの世の中である。[#地から1字上げ](十一月十五日)
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* Lange, Geschichte des Materialismus. Bd. II. S. 475.
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       九の二

 げに今の世のしくみは、金ある者にとっては、まことに便利しごくである。現に私のごとき者も、多少ずつの月給をもらっているおかげで、どれだけ世間のお世話になって便利を感じておるかわからぬ。まず手近な食物について考えてみても、何一つ私は自分に手を下して作り出した物はない。私は春が来
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