う。[#地から1字上げ](十一月十四日)
九の一
「経済学は英国の学問にして、英国は経済学の祖国なること、たれ人も否むあたわざるの事実なり」(福田《ふくだ》博士の言)。今その英国に育ちたる経済学なるものの根底に横たわりおる社会観を一言にしておおわば、現時の経済組織の下における利己心の作用をもって経済社会進歩の根本動力と見なし、経済上における個々人の利己心の最も自由なる活動をもって、社会公共の最大福利を増進するゆえんの最善の手段なりとなすにある。しかるに、元来人は教えずして自己の利益を追求するの性能を有する者なるがゆえに、ひっきょうこの派の思想に従わば、自由放任はすなわち政治の最大|秘訣《ひけつ》であって、また個人をしてほしいままに各自の利益を追求せしめおかば、これにより期せずして社会全体の福利を増進しうるということが、現時の経済組織の最も巧妙なるゆえんであるというのである。すなわち現時の経済組織を謳歌《おうか》し、その組織の下における利己心の妙用を嘆美し、自由放任ないし個人主義をもって政治の原則とすということが、いわゆる英国正統学派の宗旨とするところである。さればいや
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