だとする。今この一例について考うるに、もし汽車が顛覆しなかったならば、この人はたしかに死ななかったはずである。しかしたとい汽車は顛覆しても、もしその病気が快方に向かわなかったならば、この人は退院も許されず、従って帰郷の途につくはずもなかったのであるから、やはり死を免れたはずである。すなわちこの人の死を救わんとすれば、われわれはこれら二条件のいずれか一をなくすればよいのであるが、しかし汽車をして顛覆せしめざるの方策を講ずるのはさしつかえないけれども、その人の病気をして快方に向かわしめざるの方策を講ずるというは間違いである。もし引き続きさような事をしたならば、その人は汽車でけがをして死ぬることこそなくとも、ついには病院の床の上で医者に脈をとられつつ死ななければならぬのである。思うに以上述べたる貧乏根治策のうち、あるいはこれに類するものなきやいかん。けだし上記三策の是非得失ならびにその相互の間における関係連絡に至っては、おのずからさらに慎重なる考慮を要すべきものならん。請う余をして静かにその所思の一端を伸べしめよ。[#地から1字上げ](十一月十一日)
八の二
余は前回にお
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