下げ終わり]
 かくのごとく都市の経済事情いかんによってその割合は必ずしも一様でないけれども、ともかく以上述べたる二三の例によって見る時は、世界最富国の一たる大英国にも、肉体の健康を維持するだけの所得さえもち得ぬ貧乏人が、実に少なからずおることがわかる。
 なお以上述べしところは、ブース氏の調査を始めとし、すべて第二の意味の貧乏人(すなわち慈善工場その他救貧制度の恩恵の下に生活しつつある被救恤者《ひきゅうじゅつしゃ》)は皆除外してあって、それは少しも計算に入れてないのである。してみると、いかに貧乏人が英国にたくさんいるかということがますますよくわかる。げに英国は世界一の富国というけれども、その英国には貧乏人がかくのごとくたくさんいるのである。[#地から1字上げ](九月十六日)

       二の二

 今日の英国にいかに多くの貧乏人がいるかという事は、私のすでに前回に述べたところである。今かくのごとき多数の貧乏人の生ずる根本原因はしばらくおき、かりにその表面の直接原因を調べてみるに、たとえば先に述べたヨーク市の研究によれば、第一級の貧乏人の原因別(百分比)は次のごとくである。(ローンツリー『貧乏』縮刷版、一五四ページ*)
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主たるかせぎ人は毎日規則正しく働いていながら
ただその賃銭が少ないため………………………………………………五一・九六%[#「%」は底本では「・」の右横に付く]
家族数の多いがため(四人以上の子供を有する者)…………………二二・一六
主たるかせぎ人の死亡のため……………………………………………一五・六三
主たるかせぎ人の疾病又は老衰のため……………………………………五・一一
主たるかせぎ人の就業の不規則のため……………………………………二・八三
主たるかせぎ人の無職のため………………………………………………二・三一
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* Rowntree, Poverty (Cheap edition), p. 154.
[#ここで字下げ終わり]
[#貧乏人の原因別の図表(fig18353_02.png)入る]
 ことわざにかせぐに追い付く貧乏なしというが、右の表によって見れば、毎日規則正しく働いていながらただ賃銭が少ないために貧乏線以下に落ちている者が、全体の半ば以上すな
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