わち約五割二分に達しているのである。なお四人以上の子供を有する者は、家族数の多いがためにという原因の方に編入されているのだが、もしそれを合計するならば、第一級の貧乏人のうち約七割四分だけのものは、毎日規則正しくかせいでいながら、ただ賃銭が少ないかまたは家族数が多いがために貧乏線以上に浮かび得ぬのである。そうして主たるかせぎ人の疾病または老衰のために、あるいはその無職のために、あるいは就業の不規則なるがために貧乏している者は、すべてそれらを合計するも全体の一割二分余に過ぎぬのである。
さらにレディング、ウォリントン、ノルザンプトンの三都市について(スタンレイ市は鉱業地にして事情を異にするのみならず、調査材料少なきがゆえに除外す)、第一級の貧乏人の原因別(百分比)を見るに次のごとくである。(ボウレイ『生計と貧乏』四〇〇ページ*)
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レディング市 ウォリントン市 ノルザンプトン市
主たるかせぎ人の死亡のため………………………… 一四 六 二一
主たるかせぎ人の疾病または老衰のため………… 一一 一 一四
主たるかせぎ人の無職のため………………………… 二 三 〇
主たるかせぎ人の就業の不規則のため……………… 四 三 〇
主たるかせぎ人は毎日規則正しく
働いていながら賃銭の少なきため…………………… 四八 六〇 三〇
子供の数三人ならばさしつかえなきところを
三人以上いるがため…………………………………… 二一 二七 三五
合計……………………………………………………一〇〇 一〇〇 一〇〇
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* Bowley, Livelihood and Poverty, p. 400.
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前に引きし『生財弁』という書をひもとけば、「世間を見るに、貧乏も富貴も多くはおのが求めてするところにて、貧乏がすきか富貴がすきかといえば、だれ一人私は貧乏がすきじゃというて出るものはあるまいけれど、かせぐ事をきらいただ銭《ぜに》がつかいたいは貧乏を好むなり」など説いてあるが、著者もし今日に生きて、ローンツリー氏やボウレイ氏の著作を見るに及びたらば、おそらくその言を改むるに躊躇《ちゅうちょ》せざるべしと思う。私は去る
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