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(九)
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東坡の絶句に云ふ、梨花澹白柳深青、柳絮飛時花満[#レ]城、惆悵東闌一株雪、人生看得幾清明と。紹興中、予福州に在り、何晋之の大著を見しに、自ら言ふ、嘗て張文潜に従うて遊ぶ、文潜の此詩を哦するを見る毎《ごと》に、以て及ぶ可らずと為せしと。余按ずるに、杜牧之、句あり云ふ、砌下梨花一堆雪、明年誰[#(カ)]此《ココ》[#(ニ)]憑[#二]闌干[#一]と。東坡|固《もと》より牧之の詩を窃《ぬす》む者に非ず、然かも竟《つひ》に是れ前人已に之を道《い》へるの句、何んすれぞ文潜之を愛するの深きや、豈に別に謂《おも》ふ所あるか。聊《いささ》か之を記し以て識者を俟《ま》つ。(老学庵筆記、巻十)
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○東坡の詩は、和孔密州五絶の一で、東欄梨花と題するもの。杜牧之は世にいふ小杜、杜牧のこと。彼は晩唐の人である。
(十)
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柳子厚の詩に云ふ、海上尖山似[#二]剣鋩[#一]、秋来処処割[#二]愁腸[#一]と。東坡之を用ひて云ふ、割愁|還《マタ》有[#二]剣鋩山[#一]と。或は謂ふ、割愁腸と言ふべし、但《た》だ割愁と言ふ可からずと。亡兄仲高云ふ、晋の張望の詩に曰ふ、愁来不可割と、此れ割愁二字の出処なりと。(老学庵筆記、巻二)
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○東坡の詩は白鶴峰新居欲[#レ]成夜過[#二]西隣※[#「羽/隹」、第3水準1−90−32]秀才[#一]二首と題せるものの一。問題の句は、繋[#レ]悶豈無[#二]羅帯水[#一]、割愁還有[#二]剣鋩山[#一]といふ一聯を成せるもの。前の句は韓退之、後の句は柳子厚によることは、その自註に記してある。但し続国訳漢文大成では、自註に引く所の柳子厚の句が海上尖峰若剣鋩[#「峰若」に白丸傍点]となつてゐる。放翁は記憶に従つて筆を執り、誤つて峰を山となし若を似となしたのであらうか。蔵書に乏しい私は、今これを審にし得ない。
(十一)
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夜涼疑有雨、院静似無僧。これ潘逍遥の詩なり。(老学庵筆記、巻五)
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○東坡の詩
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佛燈漸暗饑鼠出、 山雨忽來脩竹鳴
知[#(ル)]是[#(レ)]何人[#(ノ)]舊詩句、 已應[#レ]知[#二]我此時
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