の一)
  路傍曲(三首中之第一)
冷飯雜沙礫  短褐蒙霜露
黄葉滿山郵  行人跨驢去
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冷《つ》めたき飯《めし》に砂さへまじり
ゆふべゆふべの草枕
かたしく袖も短くて
置く露霜《つゆじも》に得も堪《あ》へず
風に吹かるる黄葉《もみぢば》は
山の宿場《シユクバ》をうづめたり
道ゆく人は驢に乗りて過ぐ

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乞食の歌へる(その二)
  路傍曲(三首中之第二)
大道南北出  車輪無停日
彼豈皆奇才  我獨飢至夕
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都大路のやちまたに
ゆきかふや車馬のかずかず
人みな秀才《スサイ》と思はねど
われ独り飢えてけふも暮れぬる
[#地から2字上げ](作者時に七十一歳)

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はるさめ
  春雨
擁被聽春雨  殘燈一點青
吾兒歸漸近  何處宿長亭
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ころもかきよせ春の雨きく
よふけてほそるともしび青し
あこ帰りつく日も近づけり
長き旅路を
こよひいづこの宿にいぬらむ
[#地から2字上げ](この年、放翁七十七、子布蜀中より帰る)

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興のまにまに
  物外雜題(八首中之一)

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