くなりぬ
日を呑みて色はえにける西山に天津乙女の玉の肌見つ
日は沈み山紫に空赤く大路《おほぢ》小路《こうぢ》に灯火《ともし》見えそむ
[#地から1字上げ]十二月十日
こたつにていねつつ足を折り立てて亡き父の癖ふと思ひ出づ
うつくしと見上げしもみぢ落ちつくし乾き果てつつ吹き寄されをり[#地から1字上げ]十二月十一日
はばひろにふみならしくる軍服におそれをなして道をさけにき
人気なき阪を登れば御陵あり一人の守衛ひねもす守る(花園天皇の十楽院上陵に詣づ)
砂利しける十楽院上陵の阪道の杉の木立に鶫《つぐみ》むれとぶ
書き了へて憐むべくもおもほへり見る人もなき思ひ出のかずかず(「思ひ出」第二輯を清書し了りて)
版に刷るよすがもなくてはかなくも書きのこしおくわれの思ひ出
戦勝を神にいのらすすめらぎの忍びのみゆきけふありしとぞ
火用心火用心の声聞こゆ厠に起きし霙《みぞれ》ふる夜半
[#地から1字上げ]十二月十二日
老松のすがるる見ればかなしかり亡きおほははのすがたしぬびて[#地から1字上げ]十二月十三日

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山口の相沢君より重ねて餅を送られしを喜びて
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