秋風梟獨悲  秋風 梟 独り悲む。
酷愛物情靜  酷愛す物情の静かなるを、
斯地希埋屍  斯の地|希《ねがは》くは屍《かばね》を埋めむ。
[#地から1字上げ]二月二十六日定
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この詩を作りし時、法然院には墓地なきものと思へり。後に至り、そこには名家の新しき墓若干あり、三井家の墓地またここに移さるる由を聞き、わが屍を埋むるはやはり故郷に如かずと思ふに至れり。昭和十七年十二月三十日追記

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竹田博士の招待にて秀と共に初めて大阪文楽座を観る
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文楽やでく泣きむせぶ春の霄
でく泣くにますらを我も泣きにけり
亡びなむ芸《わざ》とも見えず三業のにほひとけゆく春のゆふぐれ[#地から1字上げ]三月十三日

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福井君に寄す
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また来ませいのち短き人の世の
いのち短き春なれば。
わが住む京はうぐひすの
啼くねも高きみやこなり、
苔美はしきみやこなり、
春たけていざよふ水にちる花の
きよらににほふみやこなり。
けふ見ればさくらはすでににほほゑめり、
咲きはえむ日も近からむ
君をも待たでその花の
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