悠然として月の昇るを待つ。
[#地から1字上げ]五月十一日
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春色
[#ここで字下げ終わり]
仰天天碧如海 天《そら》を仰げば天《そら》碧うして海の如く、
看雲雲白似波 雲を看れば雲白うして波に似たり。
光滿地花滿樹 光地に満ち花樹に満つ、
愁居奈春色何 愁ひ居らば春色を奈何。
[#地から1字上げ]六月
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性本愛文
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性本愛文宿世因 性もと文を愛す宿世の因、
錯提長劍草爲茵 錯つて長剣を提《ひつさ》げ草を茵と為す。
刑餘一枕蠹書裡 刑余 一枕 蠹書の裡、
造物還吾風月身 造物 吾に還す 風月の身。
[#地から1字上げ]七月三日
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戰雲滿乾坤
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心已久忘世事 心すでに久しく世事を忘れ、
姓名又人無知 姓名又た人の知る無し。
獨弄詩蝸廬底 独り詩を弄す蝸廬の底、
戰雲滿乾坤時 戦雲 乾坤に満つるの時。
[#地から1字上げ]七月二日
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雨日感舊
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余以癸酉十月二十日余之生日、入荒川東畔之小菅監獄。此日
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