筆を抛ちて時事を忘る、
刑餘蝉蛻身 刑余蝉蛻の身。
懶眠繙帙罕 懶眠帙を繙くこと罕に、
晏坐覆棋頻 晏坐棋を覆すること頻りなり。
有髮亦如僧 髪あるもまた僧の如く、
無錢尚不貧 銭なきもなほ貧ならず。
人嗤生計拙 人は生計の拙なるを嗤ふも、
天惠四時春 天は恵む四時の春。
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(此作屡改字句、就中、結句原作曰半生勤苦後天許作閑人。余及今猶迷取捨)
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[#地から1字上げ]六月四日
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天涯孤客、不歸郷已十年
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山村一去路千里 山村一去路千里、
雲間空望阿母家 雲間空しく望む阿母の家。
誤作風塵場裏客 誤つて風塵場裏の客となり、
十年不見故郷花 十年見ず故郷の花。
[#地から1字上げ]六月二十四日
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われ今死すとも悔なし
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われ今死すとも悔なし。
懇ろに近親に感謝し、
厚く良友に感謝し、
普く天地に感謝し了へ、
晏如として我が生を終へなむ。
今われ老いて
幸に高臥自由の身となり、
こゝろに天眷の渥きを感ずること頻りに、
ひとりゐ
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