仄の関係で仄字の瓦を避けたのだが、日本人が日本人に読んで貰ふつもりで書かれたものなら、ここなどは平仄の規則を破つて、吾々の耳に慣れた瓦全を用ふる方がよく、それに玉砕に対して瓦全といふ言葉はあるが、甎全などいふ成語はない筈でもある。
 同じく南洲の偶成七絶に、

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大聲呼酒坐高樓    大声酒を呼んで高楼に坐し、
豪氣將呑五大州    豪気将に呑まんとす五大州。
一寸丹心三尺劍    一寸の丹心、三尺の剣、
揮劍[#「揮劍」に白丸傍点]先試佞奸頭    剣を揮つて先づ試みん佞奸の頭。
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と云ふのがあり、之に対し、結句の揮剣は平仄が合はぬから、仄字の剣に代ふるに平字の刀を以てすべし、などと批評してゐる漢詩人があるは、私は甚だ不服である。これを日本読みにする場合、「一寸の丹心三尺の剣、剣を揮つて」と剣が続くからこそ、言葉の勢があるのであり、仮にその点を無視しても、ここは剣字を重ね用ひねば詩にならない。平仄が合つても合はなくても、そんなことを問題にする必要はない。私はさう考へるのである。
 ところで、そんな事を云ふのなら、初めから平仄など全然問題
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