のであらうか。――今一つ。
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「南堂五首(其五)
掃地焚香閉閣眠 地を掃ひ香を焚き閣を閉ぢて眠る、
簟紋如水帳如煙 簟紋水の如く帳は煙の如し、
客來夢覺知何處 客来りて夢覚め知る何れの処ぞ、
挂起西窗浪接天 挂起すれば西窓浪天に接す、
[詩意]地を掃ひ香を焚き閣を閉ぢて眠る、簟紋は冷水の如くにて帳帷は煙の如くである、客来の声を聞いて夢より覚めて客は何処ぞと云うて、挂起すれば西窓の外は浪が天に接する勢である、
[字解](一)簟紋 夏日に敷いて坐する具、(二)帳如煙 太白の詩、碧紗如[#レ]煙隔[#レ]窓語と、李義山の詩、水紋簟滑鋪[#二]牙牀[#一]と、」
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世間に名の知れた漢詩人でありながら、平気でこんなことを書き並べて居るのは、不思議に感じられる。
○
漢詩を日本読みにするのは、簡単なことのやうで、実は読む人の当面の詩に対する理解の程度や、その人の日本文に対する神経の鋭鈍などによつて左右され、自然、同じ詩でも人によつて読み方が違ふ。
日本人の作る漢詩は之を日本読みにする
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