+攵)/鳥」、227−11]満沙頭[#「沙頭」に白丸傍点]、沙頭[#「沙頭」に白丸傍点]日落沙[#「沙」に白丸傍点]磧長、金沙[#「沙」に白丸傍点]耀耀動飆光。(鸚鵡洲送王九遊江左)
売薬来西村[#「村」に白丸傍点]、村[#「村」に白丸傍点]烟日云夕。(山中逢道士)
煙波愁我心[#「心」に白丸傍点]、心[#「心」に白丸傍点]馳茅山洞。(宿揚子津)
余亦乗舟帰鹿門[#「鹿門」に白丸傍点]、鹿門[#「鹿門」に白丸傍点]月照開煙樹。(夜帰鹿門歌)
山公常酔習家池[#「池」に白丸傍点]、池[#「池」に白丸傍点]辺釣女自相随。(高陽池送朱二)
翻向此中牧征馬[#「征馬」に白丸傍点]、征馬[#「征馬」に白丸傍点]分飛日漸斜。(同上)
傲吏[#「吏」に白丸傍点]非凡吏[#「吏」に白丸傍点]、名流[#「流」に白丸傍点]即道流[#「流」に白丸傍点]。(梅道士水亭)
払衣去何処、高枕南[#「南」に白丸傍点]山南[#「南」に白丸傍点]。(京還贈張維)
河[#「河」に白丸傍点]県柳林辺、河[#「河」に白丸傍点]橋晩泊船。(臨渙裴明府席遇張十一房六)
県城南面漢江[#「江」に白丸傍点]流、江[#「江」に白丸傍点]嶂開成南雍州。(登安陽城楼)
異俗[#「俗」に白丸傍点]非郷俗[#「俗」に白丸傍点]、新年[#「年」に白丸傍点]改故年[#「年」に白丸傍点]。(薊門看灯)
試登秦[#「秦」に白丸傍点]嶺望秦[#「秦」に白丸傍点]川。(越中送張少府帰秦中)
[#ここで字下げ終わり]
 拾つて見ればこの程度のものに過ぎぬが、残つてゐる詩が極めて少いので、これだけのものでも特に目に着く。

                ○

 絶句や律詩では、例へば李太白の「一[#「一」に白丸傍点]叫一[#「一」に白丸傍点]廻腸一[#「一」に白丸傍点]断、三[#「三」に白丸傍点]春三[#「三」に白丸傍点]月隠三[#「三」に白丸傍点]巴」の如く、王勃の「九[#「九」に白丸傍点]月九[#「九」に白丸傍点]日望郷台、他[#「他」に白丸傍点]席他[#「他」に白丸傍点]郷送客杯」や「故[#「故」に白丸傍点]人故[#「故」に白丸傍点]情懐故[#「故」に白丸傍点]宴、相[#「相」に白丸傍点]望相[#「相」に白丸傍点]思不相[#「相」に白丸傍点]見」の如く、高青邱の「渡水[#「渡水」に白丸傍点]復渡水[#「渡水」に白丸傍点]、看花[#「看花」に白丸傍点]還看花[#「看花」に白丸傍点]、春風江上路、不覚到君家」の如く、王安石の「水[#「水」に白丸傍点]南水[#「水」に白丸傍点]北重重[#「重重」に白丸傍点]柳、山[#「山」に白丸傍点]後山[#「山」に白丸傍点]前処処[#「処処」に白丸傍点]梅、未即此身随物化、年年長趁此時来」の如く、また陸放翁の「不[#「不」に白丸傍点]飢不[#「不」に白丸傍点]寒万事足、有[#「有」に白丸傍点]山有[#「有」に白丸傍点]水一生閑、朱門不管渠痴絶、自愛茅茨三両間」の如く、一句中に同字を用ひるは差支なきも、一首中に句を別にして同字を重ね用ひるは、原則として厭むべきものとされてゐる。しかし同字の重畳によつて却て用語の妙を発揮せる例も少くない。
 前に掲げた孟浩然の送友人之京と題せる五絶の如きは、その適例の一つであるが、文同(晩唐)の望雲楼と題する次の五絶の如きも、各句に楼字を重ね用ひることによつて、特殊の味を出して居ると思はれる。

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巴山樓[#「樓」に白丸傍点]之東    巴山は楼の東、
秦嶺樓[#「樓」に白丸傍点]之北    秦嶺は楼の北。
樓[#「樓」に白丸傍点]上捲簾時    楼上簾を捲くの時、
滿樓[#「樓」に白丸傍点]雲一色    楼に満つ雲一色。
[#ここで字下げ終わり]

 家鉉翁(晩唐)の寄江南故人と題する次の詩も、やはり同字の重畳に面白味がある。

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曾向錢唐[#「錢唐」に白丸傍点]住    曾て銭唐に向つて住し、
聞鵲憶蜀[#「蜀」に白丸傍点]郷    鵲を聞いて蜀郷を憶ひき。
不知今夕夢    知らず今夕の夢、
到[#「到」に白三角傍点]蜀[#「蜀」に白丸傍点]到[#「到」に白三角傍点]錢唐[#「錢唐」に白丸傍点]    蜀に到るか銭唐に到るか。
[#ここで字下げ終わり]

 銭唐は今の浙江省の銭塘で、即ち江南であり、蜀は今の四川省に当る北地。向つては於いてと云ふに同じ。作者は今、郷里の蜀地にも居らず、また曾て住みたる銭塘にも居らず、却て友人の銭塘に在るを憶へるのである。
 張文姫(鮑参軍妻)渓口雲詩にいふ、溶溶渓[#「渓」に白丸傍点]口雲、纔向渓中[#「渓中」に白丸傍点]吐、不復帰渓中[#「渓中」に白丸傍点]、還作渓中[#「渓中」に白丸傍点]雨(溶々たる渓口の雲、纔に渓中に向つて吐く。復び渓中に帰らず
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