懸命に……一生懸命に……、そして立泳《たちおよ》ぎのようになって足を砂につけて見ようとしたら、またずぶりと頭まで潜《くぐ》ってしまいました。私は慌《あわ》てました。そしてまた一生懸命で泳ぎ出しました。
立って見たら水が膝《ひざ》の所位しかない所まで泳いで来ていたのはそれからよほどたってのことでした。ほっと安心したと思うと、もう夢中で私は泣声《なきごえ》を立てながら、
「助けてくれえ」
といって砂浜を気狂《きちが》いのように駈《か》けずり廻《まわ》りました。見るとMは遥《はる》かむこうの方で私と同じようなことをしています。私は駈けずりまわりながらも妹の方を見ることを忘れはしませんでした。波打際から随分遠い所に、波に隠れたり現われたりして、可哀《かあい》そうな妹の頭だけが見えていました。
浜には船もいません、漁夫《りょうし》もいません。その時になって私はまた水の中に飛び込んで行きたいような心持ちになりました。大事な妹を置きっぱなしにして来たのがたまらなく悲しくなりました。
その時Mが遥かむこうから一人の若い男の袖《そで》を引《ひっ》ぱってこっちに走って来ました。私はそれを見ると何も
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