まわりには白い泡がきらきらと光って、水を切った手が濡《ぬ》れたまま飛魚《とびうお》が飛ぶように海の上に現われたり隠れたりします。私はそんなことを一生懸命に見つめていました。
とうとう若者の頭と妹の頭とが一つになりました。私は思わず指を口の中から放して、声を立てながら水の中にはいってゆきました。けれども二人がこっちに来るののおそいことおそいこと。私はまた何《なん》の訳もなく砂の方に飛び上りました。そしてまた海の中にはいって行きました。如何《どう》してもじっとして待っていることが出来ないのです。
妹の頭は幾度《いくど》も水の中に沈みました。時には沈み切りに沈んだのかと思うほど長く現われて来ませんでした。若者も如何かすると水の上には見えなくなりました。そうかと思うと、ぽこんと跳《は》ね上るように高く水の上に現われ出ました。何んだか曲泳《きょくおよ》ぎでもしているのではないかと思われるほどでした。それでもそんなことをしている中《うち》に、二人は段々岸近くなって来て、とうとうその顔までがはっきり見える位になりました。が、そこいらは打寄せる波が崩れるところなので、二人はもろともに幾度も白い泡の
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