ったかも知れない。然しもう云われたことは云われてしまったのだ。
 願わくは一人の人をもあやまることなくこの感想は行け。

        二五

 あまりに明かであって、しかも往々顧みられない事実は、一つの思想が体験的の検察なしに受取られるということだ。それは思想の提供者を空《むな》しく働かせ、享受者を空しく苦しめる。

        二六

 ニイチェが「私は自分が主張を固執するために焼き殺される場合があったら、それを避けよう。主張の固執は私の生命に値いするほど重大なものではない。然し主張を変じたが故に焼き殺されねばならぬというのなら、私は甘んじて焼かれよう。それは死に値いする」という意味のことをいったそうだ。この逆説《パラドックス》は正しいと私は思う。生命の向上は思想の変化を結果する。思想の変化は主張の変化を予想する。生きんとするものは、既成の主張を以て自己を金縛《かなしば》りにしてはなるまい。

        二七

 思想は一つの実行である。私はそれを忘れてはいない。

        二八

 私の発表したこの思想に、最も直接な示唆を与えてくれたのは阪田|泰雄《やすお》氏
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