である。この機会を以て私は君に感謝する。その他、内面的経験に関《かかわ》りを持った人と物との凡てに対して私は深い感謝の意を捧げる。
二九
これは哲学の素養もなく、社会学の造詣《ぞうけい》もなく、科学に暗く宗教を知らない一人の平凡な偽善者の僅《わず》かばかりな誠実が叫び出した訴えに過ぎない。この訴えから些《いささ》かでもよいものを聴き分けるよい耳の持主があったならば、そしてその人が彼の為めによき環境を準備してくれたならば、彼もまた偽善者たるの苦しみから救われることが出来るであろう。
凡てのよきものの上に饒《ゆた》かなる幸あれ。
底本:「惜みなく愛は奪う」新潮文庫、新潮社
1955(昭和30)年1月25日発行
1968(昭和43)年12月20日25刷改版
1974(昭和49)年8月30日34刷(入力)
1987(昭和62)年10月5日58刷(校正)
入力:村田拓哉
校正:土屋隆 染川隆俊
2003年7月28日作成
青空文庫作成ファイル:
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