け加える。恋愛の前に個性の自己に対する深き要求があることを思え。正しくいうと個性の全的要求によってのみ、人は愛人を見出すことに誤謬《ごびゅう》なきことが出来る。そして個性の全的要求は容易に愛を異性に対して動かさせないだろう。その代り一度見出した愛人に対しては、愛はその根柢から揺《ゆら》ぎ動くだろう。かくてこそその愛は強い。そして尊い。愛に対する本能の覚醒《かくせい》なしには、縦令男女交際にいかなる制限を加うるとも、いかなる修正を施すとも、その努力は徒労に終るばかりであろう。
二四
もう私は私の饒舌《じょうぜつ》から沈黙すべき時が来た。若し私のこの感想が読者によって考えられるならば、部分的に於てでなく、全体に於て考えられんことを望む。殊《こと》に本能的生活の要求を現実の生活にあてはめて私が申出た言葉に於てそうだ。社会生活はその総量に於て常に顧慮されなければならぬ。その一部門だけに対する凝視は、往々にして人を迷路に導き込むだろう。
私もまた部分的考察に走り過ぎた嫌《きら》いがないとはいえない。私は人間に現われた本能即ち愛の本能をもっと委《くわ》しく語ってやむべきであ
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