う。このような事象は、その大小広狭の差こそあれ、私達が幾度も繰り返して遭遇せねばならぬことなのだ。しかも私達は往々その悲しい結果を暁《さと》らないのみか、かくの如きはあらねばならぬ須要《しゅよう》のことのように思いなし易い。
 けれども幸いにして人類はかくの如き稟資の人ばかりからは成り立っていない。そこにはもっと愛の純真な表現を可能ならしめようとする人がある。そうしないではいられない人がある。そのためには彼は一見彼に利益らしく見える結果にも惑わされない。彼には専念すべきただ一事がある。それは彼の力の及ぶかぎり、愛の純粋な表現を成就しようということだ。縦令《たとい》その人が政治にかかわっていようが、生産に従事していようが、税吏《みつぎとり》であろうが、娼婦《しょうふ》であろうが、その粗雑な生活材料のゆるす限りに於て最上の生活を目指しているのである。それらの人々の生活はそのままよき芸術だ。彼等が表現に役立てた材料は粗雑なものであるが故に、やがては古い皮袋のように崩《くず》れ去るだろうけれども、そのあとには必ず不思議な愛の作用が残る。粗雑な材料はその中に力強く籠《こ》められる愛の力によって破
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