心を満足せんが為めに、即ち彼の衷《うち》にあって表現を求めている愛に、粗雑な、見当違いな満足を与えんが為めに、愛国とか、自由とか、国威の宣揚とかいう心にもない旗印をかかげ、彼の奇妙な牽引力《けんいんりょく》と、物質的報酬とを以て、彼には無縁な民衆を煽動する。民衆はその好餌《こうじ》に引き寄せられ、自分等の真の要求とは全く関係もない要求に屈服し、過去に起った或る同じような立派な事件に、自分達の無価値な行動を強《し》いて結び付けて、そこに申訳と希望とを築き上げ、そしてその大それた指導者の命令のまにまに、身命をさえ賭《と》してその事業の成就を心がける。そして、若し運命がその政治家に苛酷《かこく》でなかったならば、彼は尨然《ぼうぜん》たる国家的若しくは世界的大事業なるものを完成する。然しそこに出来上った結果はその政治家の肖像でもなく、民衆の投影でもなく、粗雑な不明瞭な重ね写真に過ぎない。そしてそれは当事者なる政治家その人の一生を無価値にし、民衆全体の進歩を阻止し、事業そのものは、段々人間の生活から分離して、遂には生活途上の用もない瓦礫《がれき》となって、徒《いたず》らに人類進歩の妨げになるだろ
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