その時彼にとっては行為の結果に対する苦《にが》い後味が残る。その後味をごまかすために、彼は人の為めに社会の為めに義務を果し、献身の行いをしたという諦《あきら》めの心になる。そしてそこに誇るべからざる誇りを感じようとする。社会はかくの如き人の動機の如何《いかん》は顧慮することなく、直ちに彼に与えるのに社会人類の恩人の名を以てする。それには智的生活にあっては奨励的にそうするのが便利だからだ。そんな人はそんな事は歯牙《しが》にかけるに足らないことのように云いもし思いもしながら、衷心の満ち足らなさから、知らず知らずそれを歯牙にかけている。かくてその人は愛の逆用から来る冥罰《みょうばつ》を表面的な概念と社会の賞讃によって塗抹《とまつ》し、社会はその人の表面的な行為によって平安をつないで行く。かくてその結果は生命と関係のない物質的な塵芥《じんかい》となって、生活の路上に醜く堆積《たいせき》する。その堆積の余弊は何んであろう。それは誰でも察し得る如く人間そのものの死ではないか。

        一八

 愛は個性の生長と自由とである。そうお前はいい張ろうとするが、と又或る人は私にいうだろう。この世
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