点]と笑いくずれる。人々のその高笑いの声にまじって、内儀さんがまただれかに話しかける大声がのびやかに聞こえて来る。
 「春が来るのだ」
 君は何につけても好意に満ちた心持ちでこの人たちを思いやる。
 やがて漁師町をつきぬけて、この市街では目ぬきな町筋に出ると、冬じゅうあき屋になっていた西洋風の二階建ての雨戸が繰りあけられて、札幌《さっぽろ》のある大きなデパートメント・ストアの臨時出店が開かれようとしている。藁屑《わらくず》や新聞紙のはみ出た大きな木箱が幾個か店先にほうり出されて、広告のけばけばしい色旗が、活動小屋の前のように立てならべてある。そして気のきいた手代が十人近くも忙《いそが》しそうに働いている。君はこの大きな臨時の店が、岩内じゅうの小売り商人にどれほどの打撃であるかを考えながら、自分たちの漁獲が、資本のないために、ほかの土地から投資された海産物製造会社によって捨て値で買い取られる無念さをも思わないではいられなかった。「大きな手にはつかまれる」‥‥そう思いながら君はその店の角《かど》を曲がって割合にさびれた横町にそれた。
 その横町を一町も行かない所に一軒の薬種店があって、それ
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