ホック船やワク船をつと[#「つと」に傍点]のようにおおうていた蓆《むしろ》が取りのけられ、旅烏《たびがらす》といっしょに集まって来た漁夫たちが、綾《あや》を織るように雪の解けた砂浜を行き違って目まぐるしい活気を見せ始める。
鱈《たら》の漁獲がひとまず終わって、鰊《にしん》の先駆《はしり》もまだ群来《くけ》て来ない。海に出て働く人たちはこの間に少しの間《ま》息をつく暇を見いだすのだ。冬の間から一心にねらっていたこの暇に、君はある日朝からふいと家を出る。もちろんふところの中には手慣れたスケッチ帳と一本の鉛筆とを潜まして。
家を出ると往来には漁夫たちや、女でめん[#「でめん」に傍点](女労働者)や、海産物の仲買いといったような人々がにぎやかに浮き浮きして行ったり来たりしている。根雪が氷のように磐《いわ》になって、その上を雪解けの水が、一冬の塵埃《じんあい》に染まって、泥炭地《でいたんち》のわき水のような色でどぶどぶと漂っている。馬橇《ばそり》に材木のように大きな生々しい薪《まき》をしこたま[#「しこたま」に傍点]積み載せて、その悪路を引っぱって来た一人の年配な内儀《かみ》さんは、君を認め
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