来た事をまざまざと思わせる。北西の風が東に回るにつれて、単色に堅く凍りついていた雲が、蒸されるようにもやもやとくずれ出して、淡いながら暖かい色の晴れ雲に変わって行く。朝から風もなく晴れ渡った午後なぞに波打ちぎわに出て見ると、やや緑色を帯びた青空のはるか遠くの地平線高く、幔幕《まんまく》を真一文字に張ったような雪雲の堆積《たいせき》に日がさして、まんべんなくばら色に輝いている。なんという美妙な美しい色だ。冬はあすこまで遠のいて行ったのだ。そう思うと、不幸を突き抜けて幸福に出あった人のみが感ずる、あの過去に対する寛大な思い出が、ゆるやかに浜に立つ人の胸に流れこむ。五か月の長い厳冬を牛のように忍耐強く辛抱しぬいた北人の心に、もう少しでひねくれた根性にさえなり兼ねた北人の心に、春の約束がほのぼのと恵み深く響き始める。
 朝晩の凍《し》み方はたいして冬と変わりはない。ぬれた金物がべたべたと糊《のり》のように指先に粘りつく事は珍しくない。けれども日が高くなると、さすがにどこか寒さにひび[#「ひび」に傍点]がいる。浜べは急に景気づいて、納屋の中からは大釜《おおがま》や締框《しめわく》がかつぎ出され、
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