に必ずいだくなつかしい感情だった。
 それもやがて疲労の夢が押し包む。
 今岩内の町に目ざめているものは、おそらく朝寝坊のできる富んだ惰《なま》け者と、灯台守《とうだいも》りと犬ぐらいのものだろう。夜は寒くさびしくふけて行く。

       八

 君、君はこんな私の自分勝手な想像を、私が文学者であるという事から許してくれるだろうか。私の想像はあとからあとからと引き続いてわいて来る。それがあたっていようがあたっていまいが、君は私がこうして筆取るそのもくろみに悪意のない事だけは信じてくれるだろう。そして無邪気な微笑をもって、私の唯一の生命である空想が勝手次第に育って行くのを見守っていてくれるだろう。私はそれをたよってさらに書き続けて行く。
 鰊《にしん》の漁期――それは北方に住む人の胸にのみしみじみ[#「しみじみ」に傍点]と感ぜられるなつかしい季節の一つだ。この季節になると長く地の上を領していた冬が老いる。――北風も、雪も、囲炉裏も、綿入れも、雪鞋《つまご》も、等しく老いる。一片の雲のたたずまいにも、自然のもくろみと予言とを人一倍鋭敏に見て取る漁夫たちの目には、朝夕の空の模様が春めいて
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