よ」
「お前もか」
「私は言わねえ」
「そうだべさ。それならそれでいいでねえか。わけのわかんねえやつさなんとでも言わせておけばいいだ。これを見たか」
「見たよ。‥‥荘園《しょうえん》の裏から見た所だなあそれは。山はわし気に入ったども、雲が黒すぎるでねえか」
「さし出口はおけやい」
そして君たち二人は顔を見合って溶けるように笑《え》みかわす。寒さはしんしんと背骨まで徹《とお》って、戸外には風の落ちた空を黙って雪が降り積んでいるらしい。
今度は君が発意する。
「おい寝べえ」
「兄《あん》さん先に寝なよ」
「お前寝べし‥‥あしたまた一番に起きるだから‥‥戸締まりはおらがするに」
二人はわざと意趣《いしゅ》に争ってから、妹はとうとう先に寝る事にする。君はなお半時間ほどスケッチに見入っていたが、寒さにこらえ切れなくなってやがて身を起こすと、藁草履《わらぞうり》を引っかけて土間に降り立ち、竈《かまど》の火もとを充分に見届け、漁具の整頓《せいとん》を一わたり注意し、入り口の戸に錠前をおろし、雪の吹きこまぬよう窓のすきまをしっかり[#「しっかり」に傍点]と閉じ、そしてまた囲炉裏座
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