ながら、漁夫たちは見慣れた山々の頂をつなぎ合わせて、港のありかをそれとおぼろげながら見定める。そこには妻や母や娘らが、寒い浜風に吹きさらされながら、うわさとりどりに汀《みぎわ》に立って君たちの帰りを待ちわびているのだ。
 これも牛乳のような色の寒い夕靄《ゆうもや》に包まれた雷電峠の突角がいかつく大きく見えだすと、防波堤の突先《とっさき》にある灯台の灯《ひ》が明滅して船路を照らし始める。毎日の事ではあるけれども、それを見ると、君と言わず人々の胸の中には、きょうもまず命は無事だったという底深い喜びがひとりでにわき出して来て、陸に対する不思議なノスタルジヤが感ぜられる。漁夫たちの船歌は一段と勇ましくなって、君の父上は船の艫《とも》に漁獲を知らせる旗を揚げる。その旗がばたばたと風にあおられて音を立てる――その音がいい。
 だんだん間近になった岩内の町は、黄色い街灯の灯《ひ》のほかには、まだ灯火もともさずに黒くさびしく横たわっている。雪のむら消えた砂浜には、けさと同様に女たちがかしこここにいくつかの固い群れになって、石ころのようにこちん[#「こちん」に傍点]と立っている。白波がかすかな潮の香と音
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