にすぐ浮かび出て来るのは、なんと言ってもさびしく物すさまじい北海道の冬の光景だ。

       五

 長い冬の夜はまだ明けない。雷電峠と反対の湾の一角から長く突き出た造りぞこねの防波堤は大蛇《だいじゃ》の亡骸《むくろ》のようなまっ黒い姿を遠く海の面に横たえて、夜目にも白く見える波濤《はとう》の牙《きば》が、小休《おや》みもなくその胴腹に噛《く》いかかっている。砂浜に繁《もや》われた百|艘《そう》近い大和船は、舳《へさき》を沖のほうへ向けて、互いにしがみつきながら、長い帆柱を左右前後に振り立てている。そのそばに、さまざまの漁具と弁当のお櫃《ひつ》とを持って集まって来た漁夫たちは、言葉少なに物を言いかわしながら、防波堤の上に建てられた組合の天気予報の信号灯を見やっている。暗い闇《やみ》の中に、白と赤との二つの火が、夜鳥の目のようにぎらり[#「ぎらり」に傍点]と光っている。赤と白との二つの球は、危険警戒を標示する信号だ。船を出すには一番鳥《いちばんどり》が鳴きわたる時刻まで待ってからにしなければならぬ。町のほうは寝しずまって灯《ひ》一つ見えない。それらのすべてをおおいくるめて凍った雲は幕
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