のように空低くかかっている。音を立てないばかりに雲は山のほうから沖のほうへと絶え間なく走り続ける。汀《みぎわ》まで雪に埋まった海岸には、見渡せる限り、白波がざぶんざぶん[#「ざぶんざぶん」に傍点]砕けて、風が――空気そのものをかっさらってしまいそうな激しい寒い風が雪に閉ざされた山を吹き、漁夫を吹き、海を吹きまくって、まっしぐらに水と空との閉じ目をめがけて突きぬけて行く。
漁夫たちの群れから少し離れて、一団になったお内儀《かみ》さんたちの背中から赤子の激しい泣き声が起こる。しばらくしてそれがしずまると、風の生み出す音の高い不思議な沈黙がまた天と地とにみなぎり満ちる。
やや二時間もたったと思うころ、あや目も知れない闇《やみ》の中から、硫黄《いおう》が丘《たけ》の山頂――右肩をそびやかして、左をなで肩にした――が雲の産んだ鬼子のように、空中に現われ出る。鈍い土がまだ振り向きもしないうちに、空はいち早くも暁の光を吸い初めたのだ。
模範船(港内に四五|艘《そう》あるのだが、船も大きいし、それに老練な漁夫が乗り込んでいて、他の船にかけ引き進退の合図をする)の船頭が頭をあつめて相談をし始める。
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