う老いさらぼえた雪道を器用に拾いながら、金魚売りが天秤棒《てんびんぼう》をになって、無理にも春をよび覚《さ》ますような売り声を立てる季節にはなったろう。浜には津軽《つがる》や秋田《あきた》へんから集まって来た旅雁《りょがん》のような漁夫たちが、鰊《にしん》の建網《たてあみ》の修繕をしたり、大釜《おおがま》の据《す》え付《つ》けをしたりして、黒ずんだ自然の中に、毛布の甲がけや外套《がいとう》のけばけばしい赤色をまき散らす季節にはなったろう。このころ私はまた妙に君を思い出す。君の張り切った生活のありさまを頭に描く。君はまざまざと私の想像の視野に現われ出て来て、見るように君の生活とその周囲とを私に見せてくれる。芸術家にとっては夢と現《うつつ》との閾《しきい》はないと言っていい。彼は現実を見ながら眠っている事がある。夢を見ながら目を見開いている事がある。私が私の想像にまかせて、ここに君の姿を写し出してみる事を君は拒むだろうか。私の鈍い頭にも同感というものの力がどのくらい働きうるかを私は自分でためしてみたいのだ。君の寛大はそれを許してくれる事と私はきめてかかろう。
 君を思い出すにつけて、私の頭
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