、重々しい口調で別れの挨拶《あいさつ》をすますと、ガラス戸を引きあけて戸外に出た。
私はガラス窓をこずいて外面に降り積んだ雪を落としながら、吹きたまったまっ白な雪の中をこいで行く君を見送った。君の黒い姿は――やはり頭巾をかぶらないままで、頭をむき出しにして雪になぶらせた――君の黒い姿は、白い地面に腰まで埋まって、あるいは濃く、あるいは薄く、縞《しま》になって横降りに降りしきる雪の中を、ただ一人だんだん遠ざかって、とうとうかすんで見えなくなってしまった。
そして君に取り残された事務所は、君の来る前のような単調なさびしさと降りつむ雪とに閉じこめられてしまった。
私がそこを発《た》って東京に帰ったのは、それから三四日後の事だった。
四
今は東京の冬も過ぎて、梅が咲き椿《つばき》が咲くようになった。太陽の生み出す慈愛の光を、地面は胸を張り広げて吸い込んでいる。君の住む岩内の港の水は、まだ流れこむ雪解《ゆきげ》の水に薄濁るほどにもなってはいまい。鋼鉄を水で溶かしたような海面が、ややもすると角立《かどだ》った波をあげて、岸を目がけて終日攻めよせているだろう。それにしてもも
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