ころにねじこむと、こそこそと入り口に行って長靴《ながぐつ》をはいた。靴の皮は夕方の寒さに凍《こお》って、鉄板のように堅く冷たかった。
雪は燐《りん》のようなかすかな光を放って、まっ黒に暮れ果てた家々の屋根をおおうていた。さびしいこの横町は人の影も見せなかった。しばらく歩いて例のデパートメント・ストアの出店の角《かど》近くに来ると、一人の男の子がスケート下駄《げた》(下駄の底にスケートの歯をすげたもの)をはいて、でこぼこ[#「でこぼこ」に傍点]に凍った道の上をがりがり[#「がりがり」に傍点]と音をさせながら走って来た。その子はスケートに夢中になって、君のそばをすりぬけても君には気がついていないらしい。
「氷の上がすべれだした時はほんとに夢中になるものだ」
君は自分の遠い過去をのぞき込むようにさびしい心の中にもこう思う。何事を見るにつけても君の心は痛んだ。
デパートメント・ストアのある本通りに出ると打って変わってにぎやかだった。電灯も急に明るくなったように両側の家を照らして、そこには店の者と購買者との影が綾《あや》を織った。それは君にとっては、その場合の君にとっては、一つ一つ見知ら
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