ぬものばかりのようだった。そこいらから起こる人声や荷橇《にぞり》の雑音などがぴんぴん[#「ぴんぴん」に傍点]と君の頭を針のように刺激する。見物の前に引き出された見世物小屋の野獣のようないらだたしさを感じて、君は眉根《まゆね》の所に電光のように起こる痙攣《けいれん》を小うるさく思いながら、むずかしい顔をしてさっさ[#「さっさ」に傍点]とにぎやかな往来を突きぬけて漁師町《りょうしまち》のほうへ急ぐ。
しかし君の家が見えだすと君の足はひとりで[#「ひとりで」に傍点]にゆるみがちになって、君の頭は知らず知らず、なお低くうなだれてしまった。そして君は疑わしそうな目を時々上げて、見知り越しの顔にでもあいはしないかと気づかった。しかしこの界隈《かいわい》はもう静まり返っていた。
「だめだ」
突然君はこう小さく言って往来のまん中に立ちどまってしまった。そうして立ちすくんだその姿の首から肩、肩から背中に流れる線は、もしそこに見守る人がいたならば、思わずぞっ[#「ぞっ」に傍点]として異常な憂愁と力とを感ずるに違いない不思議に強い表現を持っていた。
しばらく釘《くぎ》づけにされたように立ちすくんでい
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