自分の一人むすこの悪友でもあるかのごとく思いなして、君が行くとかつてきげんのいい顔を見せた事のないその父らしい声だった。Kはちょっと反抗するような顔つきをしたが、陰性なその表情をますます陰性にしただけで、きぱきぱ[#「きぱきぱ」に傍点]と盾《たて》をつく様子もなく、父の心と君の心とをうかがうように声のするほうと君のほうとを等分に見る。
 君は長座をしたのがKの父の気にさわったのだと推すると座を立とうとした。しかしKはそういう心持ちに君をしたのを非常に物足らなく思ったらしく、君にもぜひ夕食をいっしょにしろと勧めてやまなかった。
 「じゃ僕は昼の弁当を食わずにここに持ってるからここで食おうよ。遠慮なく済まして来たまえ」
と君は言わなければならなかった。
 Kは夕食を君に勧めながら、ほんとうはそれを両親に打ち出して言う事を非常に苦にしていたらしく、さればとてまずい心持ちで君をかえすのも堪えられないと思いなやんでいたらしかったので、君の言葉を聞くと活路を見いだしたように少し顔を晴れ晴れさせて調剤室を立って行った。それも思えば一家の貧窮がKの心に染《し》み渡《わた》ったしるし[#「しるし」に傍点
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