がおくれるくらいになっているのを知りながら、それをどうすることもできない自分を思うと、自分は苦しい。けれども今度のだけは是《ぜ》が非《ひ》でも断れ。そんなことが書いてあった。
「どうでしょうな」
 五つ紋の古い紬《つむぎ》の羽織を着たその男は、おせいの方をも一度じっと見て、その眼を父の方に移した。
「どうだな、おせい」
 父はまたその男の眼を避けるようにおせいを見るのだった。おせいは身がすくむような気がして、恨めしそうに父を見かえした。
「浅田さんもさっきからこれほど事をわけて話してくださるんだから、お前、何んとか御挨拶をしないじゃならんぞ。お父さんもそうたびたび千歳からかけて足を運ぶわけにはいかないしよ」
 と父は、いっそう腕を固く組んで、顔を落して説き伏せるように一語一語に力を入れた。
 それでもおせいは何んと答えようもなかった。ようやくのことで唾を呑みこんで、居住まいをなおしながら下を向いた。
「いや、こりゃ私がいちゃかえって御相談がまとまりますまい。私は勧業の方の人に用もありますししますから、これでひとまずお暇とします。……じゃお嬢さん、ひとつよくお考えなすって。仲人口《なこう
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