してもあなたのようにあの方をいい方だとばかり極めるわけにはいかないと思うところもあるのだけれども、星野さんがおっしゃってくださるのだから私は信じていていいと思います。……けれども噂というものもあながちばかにはできないから、あなたもその辺は考えておつきあいなさいよ。遊廓なんぞにも平気でいらっしゃるという人もあるんだから……」
 おぬいは遊廓という言葉を母の口から聞くと、身がすくみそうに恥じらわしくなって、顔の火照《ほて》るのを覚えた。母はそれを見て少し違った意味に取ったらしい。
「そうね、私は星野さんや渡瀬さんを信ずるよりあなたを信じましょうね。渡瀬さんに用心するより、あなたが真直な心をさえ持っていれば少しもこわいことはありませんよ。どんなことがあっても人様を疑うのはよくないものね。正しい心がけで、そのほかは神様におまかせしておけば安心です。……ではこれから出かけてきますからね、渡瀬さんがいらしったらよろしく」
 こういい残して母はかいがいしく、雪のちらちら降る中を病家へと出かけていった。
 母を送りだして茶の間に帰ったおぬいは、ストーヴに薪《まき》を入れ添えて、火口のところにこぼれ落ち
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